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東京地方裁判所 昭和62年(ワ)14838号 判決 1988年7月22日

原告

新井久

被告

有限会社夏見運送店

ほか一名

主文

一  反訴被告らは、反訴原告に対し、各自金五〇万円及びこれに対する昭和六二年一〇月三〇日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

二  反訴原告のその余の請求をいずれも棄却する。

三  訴訟費用は、これを三分し、その一を反訴被告らの負担とし、その余を反訴原告の負担とする。

四  この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  反訴被告ら(以下「被告ら」という。)は、反訴原告(以下「原告」という。)に対し、各自金一八〇万円及びこれに対する昭和六二年一〇月三〇日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告らの負担とする。

3  仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告の請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  反訴被告有限会社夏見運送店(以下「被告会社」という。)は、反訴被告高橋守(以下「被告高橋」という。)の使用者である。

被告高橋は、被告会社の事業の執行として普通貨物自動車を運転中、昭和六二年二月九日午前六時五〇分頃、千葉県浦安市美浜二―二先道路上において、前方不注意及び車間距離不保持の過失により原告所有の普通乗用自動車(以下「本件自動車」という。)に追突し、本件自動車が破損した(以下「本件事故」という。)。

2  本件自動車の本件事故前の価格は金九〇〇万円であつたが、本件事故の結果修理後においてもその価格は金七〇〇万円に減少し、原告はその差額金二〇〇万円相当の損害を被つた。

よつて、原告は、被告らに対し、民法七〇九条、七一五条に基づき、各自右損害のうち金一八〇万円及びこれに対する反訴状送達の日の翌日である昭和六二年一〇月三〇日から支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1の事実は認める。

2  同2の事実は否認する。

第三証拠

本件訴訟記録中の書証、証人等目録記載のとおり。

理由

一  請求原因1の事実は当事者間に争いがない。

二  本件自動車の損害について検討する。

成立に争いのない甲第一号証、弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる乙第一号証、小島敏が昭和六二年二月一〇日撮影した本件自動車の写真であることに争いのない乙第七号証の一ないし二六、原告本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば次の事実を認めることができる。

本件自動車は、八五年式メルセデスベンツ五〇〇SECであつて、原告が昭和六一年一二月中古車であつたのをインターナシヨナル通商株式会社から代金九〇〇万円で購入したものである。

本件自動車は、昭和六一年一二月に物損事故にあつたことがあるが、その修理は了していて、本件事故当時何ら瑕疵がなかつた。

本件事故の結果、本件自動車は後部付近が大きく破損し、和田自動車工業株式会社で費用金一八四万九五〇〇円を要する修理を施したが、修理後に走行中車体が振動するなどの異常が発生したため、再修理を実施した。

右再修理の結果、前記異常は改善され、本件自動車は車の使用能力、外観等には支障が存しない状態に回復した。

しかし、前記破損の程度が大きかつたため、右各修理後においても、本件自動車を本件事故前の状態に完全に修復することは技術的に困難であり、今後、修理の際接合した部分に変色、腐食等が発生することが予想される。

以上の事実が認められ、右認定に反する証拠はない。右事実によれば、本件自動車には現在顕在的な支障は存しないものの、完全な修復が不可能であつたことから、修理が不完全である部分の隠れた損傷が近い将来顕在化することが予想され、これが本件自動車の耐用年数に影響を及ぼし、あるいは顕在化した損傷につき更に修理費用等を要する事態が推認されるものといわなければならない。

したがつて、本件自動車は、現在においても右隠れた損傷を有する限度において損害を被つたものというべきであり、本件自動車の車種、年式、使用状態、本件事故による破損の部位及びその程度、修理の内容並びに将来顕在化することが予想される損傷の内容等を総合勘案すると右損害は金五〇万円と認めるのが相当である。

三  結論

以上の事実によれば、原告の本訴請求は被告らに対し前記損害金五〇万円及びこれに対する反訴状送達の日の翌日である昭和六二年一〇月三〇日から支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度において理由があるからこれを認容し、その余は失当であるからいずれもこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九二条、九三条を、仮執行の宣言につき同法一九六条を、各適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 岡本岳)

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